東京高等裁判所 昭和25年(う)508号 判決
衆議院議員選挙法第一一二条第一項第一号に利益供与の相手方は選挙人又は選挙運動者に限られるが、同条の選挙運動者とは現実に選挙運動に着手した者であることを要せず、苟も選挙運動の請託を受けて之を承諾した者は、その後現実に選挙運動に従事したと否とを問わず之を前記選挙法第一一二条の選挙運動者と認めるのが相当である。然るに本件犯行の日時である昭和二三年一二月一二日及び同月一五日頃に於ては、昭和二四年一月二三日施行の選挙の告示は発布されず、従つて立候補の届出を為すことも法律上不能であるが、その頃被告人に於ては原判示の如く斎京米蔵から候補者田中彰治のため投票並びに選挙運動の依頼を受けその報酬として供与される情を知りながら金品の供与を受けたものであるのみならず原判決挙示の証拠によれば被告人がその頃田中彰治のため選挙運動に従事する決意をしていたことが認められる以上は被告人がその後現実に選挙運動に従事したか否かを問うまでもなく、田中彰治立候補届出前からの選挙運動者と認めるに妨ないのであり所論の如く必ずしも選挙に於ける参謀格の者を指称するものではない。従つて立候補前の選挙運動者なる者の原審判決は理由不備や事実誤認は存しないから所論はその理由がない。
(註 本件は量刑不当により破棄自判)